電子書籍はこのサービスでブレイクする!?
三井ベンチャーズとティーガイアが主催する(協賛・協力:ソニー、三井物産)次世代モバイルプラットフォーム上での、アプリ、ビジネスモデル、サービス、アイデアのコンテスト「i*deal Competition 2010」。
http://ascii.jp/elem/000/000/505/505621/
その最終審査会・表彰式が開催され、5組の最終選考進出者から、最優秀賞とティーガイア賞が決定された。
冒頭では、各審査員の挨拶が行なわれたが、その中で林氏は「今年は国内のすべてのキャリアがアンドロイドを出す。ハード、ソフト、キャリアの激戦の年、来年に向けてモバイルの世界が変わってくる中で、いろいろなアイデアを目にできたのは貴重な機会だ」と語る
通信・ITSジャーナリストの神尾寿氏
「次世代モバイルビジネス 新時代のキーワード」と題して基調講演を行なったのは、通信・ITSジャーナリストの神尾寿氏。今は新しい10年のスタートラインの時期だとし、通信インフラの大容量化とデバイスの半導体高集積化が急速に進んでいる現状を語った。
神尾氏が提示した次の時代のキーワードは「7+1(n)」。3スクリーンのほかに、iPadのようなパームトップデジタルコンテンツ・インターネットプレーヤー、カーナビやPNDのようなナビゲーション、ワンセグテレビ、デジタルフォトフレームの進化型などを数えると全部で「7」で、最後の「+1(n)」はデジタルサイネージだ。デジタルサイネージという存在は1つだが、さまざまなところに点在するために(n)とした。
重要なのは、スクリーンが増えることと、これらを連携したビジネスが求められること。たとえば現在ははスクリーンごとに事業部が分かれている体制が主流だが、今後はクラウドによるスクリーンの連携が鍵となるという。そのため、たとえばコンテンツプロバイダも、携帯電話だけを見ていればいいわけではなく、今後は携帯電話のコンテンツを他のスクリーンにどうやったら提供できるのか、その連携をネット上で行なう発想が必要だという。
ダブル受賞に最優秀賞の増殖
異例の選考となった授賞式
今年は最優秀賞のほかに「ティーガイア賞」も設けられるなど、よりグレードアップした本コンテストだが、最終審査会ではさらなる波乱というか、前代未聞の“最優秀賞が2件”という発表がなされた。なお、最優秀賞を獲得した2組は、賞金の100万円を半分ずつ渡されることとなった。
審査員のみなさん。右から、アスキー総合研究所 所長 遠藤諭、ITジャーナリストの林信行氏、ティーガイア代表取締役社長 宮崎重則氏ソニー 技術開発本部 企画部 統括部長 大西完司氏、三井ベンチャーズ/株式会社エム・ヴィー・シー代表取締役社長 大泉克彦氏
最優秀賞を手にしたのは、「Layered Reading」をデモしたProject LRの3人と、「FICCLe」をデモしたグレップファインド 代表取締役斎藤幸士氏。なお、Project LRはなんとティーガイア賞も受賞するという、ダブル受賞と相成った。
最優秀賞受賞の2組。右から、グレップファインドの斎藤氏(FICCLe)、Project LR(Layered Reading)の三谷忠照氏、安藤直人氏、鈴木雅陽氏
電子書籍をニコ動化!?
Layerd Reading
Layerd Reading。黄色のラインや、緑色のコメントが入っている。こうして、複数のユーザーが電子書籍の上に被せられた“レイヤー”上でやりとりする。画面下には、「メッセージ」、「フレンドステータス」、「リクエスト」といったボタンが並ぶ
ダブル受賞に輝いたProject LRが発表したのは「新たな読書体験とビジネスを創出する、電子書籍のアイデア(Layered Reading)」。電子書籍の上にレイヤーを乗せ、そのレイヤーに書籍の付加情報が書き込まれることで、“本を読む”という行為を楽しくしようというものだ。
Layered Readingの概念
デモンストレーションでは、ビジネス(電子)書籍を読んでいるユーザーが、上司の「この個所を読んでね」という「リクエスト」を受け取り、その上司のレイヤーをダウンロードすることで、書籍の該当個所に上司が入れたアンダーラインやコメントを閲覧する、というシナリオが展開された。
上司のリクエストに応えてレイヤーをインストール後、コメントを返している
ほかにも、ファッション雑誌に掲載されたスカーフに関して友達と「私買う!」といった会話が交わされたり、商品情報が表示されたりという展開や、絵本の上に被せたレイヤーを使って、“触って動く絵本”もデモされた。
ファッション雑誌での、友達とのやりとり(左)、触って動く絵本(中、右)
Project LRがLayered Readingで採用を考えているビジネスモデルは、出版社から「ソフトウェア使用料」、「追加コンテンツや商品購入時の決済手数料」、「文章単位、ページ単位の生声を集めたマーケティングデータ提供料」を得るというものだ。
Layered Readingの想定ビジネスモデル
プレゼン中、「今後の主なアクション」として、見事優勝し、賞金を獲得した暁には打ち上げで焼き肉を食しに行くと宣言して会場を沸かせたが、見事現実のものとなった
Project LRの3人は、もともと大学時代の友達同士。現在三谷氏が米国在住のため、深夜にSkypeでミーティングをしたり、土日に作業をしたりと、使える時間をフル活用して今回に臨んだ。また、Layered Readingを作る前には、同じくレイヤーという概念を用いた電子新聞を作っていたのだそうだ。それを活かして電子新聞を提出するか、それとも電子書籍で行くのか、かなりの議論をして電子書籍へと舵を切ったのだそうだが、それが見事奏功したというわけだ。
俺のことはネットに聞いてくれ!
ソーシャル・プラットフォームFICCLe
最優秀賞を獲得したもう1組、グレップファインドの代表取締役 斎藤幸士氏は、「FICCLe―アクティビティが伝搬するソーシャルプラットフォーム(人とWebとの新たな関係)」と題してデモを行なった。FICCLe(フィックル)のコンセプトは、ネットとそれ以外の活動をシームレスにしていくというもの。たとえばSNSは、どうしてもSNS内での、知人とのコミュニケーションになってしまいがちだが、それが「本当にソーシャルと言えるのか?」という疑問から始まっている。
具体的にFICCLeは、SNSやTwitterなどで行なったネット上のさまざまな言動をクラウド上にあるFICCLeの嗜好データベースにため込み、ネット上のECサイトやリアル店舗などがこの嗜好データベースを参照してリコメンドを行なうというものだ。ECサイトにデータを渡すかどうかはユーザーが明示的に判断可能である点、FICCLe情報とECサイトをつなぐのが、ネット上のサーバー同士ではなくユーザーの手元にあるデバイスである点が特徴となっている。
実際の使われ方だが、斎藤氏が提示したのは、現実世界におけるシナリオと、ネット世界におけるシナリオだ。
現実世界のシナリオ
「現実世界シナリオ」では、iPhoneからFICCLeのブックマーク(FICCLeはHTML5に特化して作られており、アプリと同じユーザービリティをもたらすという)をクリックし、リストアップされた現在地周辺のレストランを選択、目的の店に入り同時にFICCLe上で“チェックイン”ボタンを押す。店側の端末では、ユーザーの来店記録から最近食べたものまでの記録を参照して、メニューをリコメンドできるというストーリーが展開された。
ネット世界のシナリオ
ネット世界のシナリオは、SNSの会話を元にしたFICCLeのデータを元にAmazonがリコメンドを行ない、さらにAmazonでの活動通知を受け取った友人から「ネットで服を買うならZoZO Townでしょw」とアドバイスを受けるというものだ。SNSの中で行なわれた不定型な会話がデータとなり、ECサイトというシステムと連携し、且つ知人からのさらなるフィードバックが得られる様が物語られている。
シナリオを提示したあとに、斎藤氏はFICCLeの細かい仕組みを解説した。クラウド上にはFICCLeのサーバーがあり、ここにソーシャルブックマークやブログ、Twitterなどから集められたユーザーのデータが集積される。そして、ユーザーがたとえばECサイトを閲覧すると、ECサイトのドキュメントが表示されるわけだが、この際にローカルデバイスのドキュメント内で、FICCLeのJavascriptライブラリを使ったドメイン間通信によって、ユーザーの嗜好データがECサイト側に渡されるという仕組みだ。
FICCLeの仕組み。ECサイトとFICCLeの間では、サーバー間でのデータのやりとりは行なっていない。ブラウザの中で、Javascriptを使ってドメイン間の通信をしユーザーのデータをやりとりするため、ブラウザを閉じてしまえば、FICCLeデータにはアクセスできなくなる
この場合、ユーザーは自分の手元でデータを渡すかどうかを選択可能であり、且つ斎藤氏は「どうぞ使ってください」とユーザーが言ってしまうようなサービスを実現したいとしている。
なおクライアントの構築期間に関しては、HTML5を使い、あとはスタイルシートを適用するだけで作れてしまうので、作成は非常に楽に済むという。実際、デモに使われたアプリライクに動くHTML5のFICCLe(クライアント)のモックアップは、4日程度で作れてしまった。最初のローンチは夏頃にしたいとのことだ。
現在我々は、どのデバイスを使おうとも、インターネットの情報を得る場合はほぼWebブラウザを介している。つまり、ブラウザにはインターネットの情報すべてにアクセスをしている。だから、FICCLeはクラウド上の個人リソースを、サーバー間ではなくてデバイスを介してつないでいく。デバイスを介すことで、ユーザーは面倒なサイト間連携の設定を回避できるほか、Webブラウザを閉じてしまえばサービスがそこで停止されるという動作のわかりやすさも、FICCLeの売りだ。
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最優秀賞を獲得した2作品は、いずれも社会インフラの根幹に挑戦しているように見受けられる。Layered Readingは“本”という存在に新しい楽しみ方を提示したものだし、FICCLeが普及すれば生活スタイルも相当変わるはずだ。各審査員の挨拶や、神尾氏の基調講演でも伝えられているとおり、今は変化の時。i*deal Competiton 2010はひとまず幕を閉じたが、約200人の聴衆を見渡せば、次世代モバイル環境に対するチャレンジが、今後一層加速していくであろう雰囲気が伝わってきた。
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